NANATUKATABAMI: TYOUSOKABENIDAIHUNNTOUKI (NOBERUZU) (Japanese Edition)

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Artikelnummer 237146447 Erscheinungsdatum 2026/07/10 Listenpreis €90.00 Modellnummer 237146447
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大坂夏の陣 ― 長宗我部盛親慶長二十年五月。大坂の空は、どこまでも低かった。夏が近いというのに、雲は厚く、湿った風が城の焼け跡を吹き抜けている。焦げた木の匂いと、まだ消えぬ火薬の臭いが混じり、空気は重く、どこか鉄の味を含んでいた。つい数日前まで、この場所には城があった。豊臣の最後の城、大坂城である。しかし今、その姿はない。石垣だけが黒く残り、天守のあった場所には灰色の煙がまだ細く立ち上っていた。戦は終わった。そして、戦国という時代もまた、終わろうとしていた。その焼け跡の一角に、一人の武将が座っていた。長宗我部盛親である。縄はかけられていない。だが四方には徳川の兵が立ち、逃げる道などどこにもなかった。甲冑はすでに外され、黒い小袖だけの姿である。肩には戦の埃が残り、髪も乱れていた。盛親は、黙って城跡を見ていた。風が吹き、灰が舞う。遠くで、誰かが瓦礫を動かしている音がした。勝った兵たちは、すでに戦の後片付けを始めていた。戦とはいつもそういうものである。終わった瞬間から、次の秩序が作られていく。盛親は静かに目を閉じた。耳の奥で、まだ戦の音が残っていた。槍のぶつかる音。鉄砲の轟き。兵の叫び。そして――父の声。ふと、盛親は小さく笑った。「父上」誰に言うでもなく、そう呟いた。長宗我部元親。四国を統一した武将。かつて「姫若子」と呼ばれながら、土佐の山国から立ち上がり、阿波、讃岐、伊予を制し、四国すべてを手に入れた男である。盛親は、その息子だった。しかし――四国は、もうない。秀吉の四国征伐の後、長宗我部の国は削られ、土佐一国のみとなった。そして関ヶ原の戦いで盛親が西軍についたことで、その最後の国さえ失われた。盛親は、すべてを失った武将であった。風が吹いた。城跡の向こうに、遠い山が見えた。その山を見た瞬間、盛親の胸に一つの景色がよみがえった。岡豊城。土佐の山城。幼い頃、父と並んで見た山々。盛親は、あの日のことを思い出していた。まだ少年の頃である。岡豊城の櫓に立ち、父とともに四国の山を見ていた。山は幾重にも重なり、遠く海まで続いていた。父・元親は言った。「盛親」「はい、父上」「国とは、何だと思う」盛親は答えられなかった。城だろうか。兵だろうか。元親は静かに笑った。「国とは城ではない」盛親は父を見た。元親は遠くの山を指した。「人だ」「人……」「民を守る者が、武将だ」その言葉を、盛親はずっと覚えていた。だからこそ。盛親は徳川に従わなかった。関ヶ原でも。大坂でも。たとえ国がなくても、父の志を捨てることはできなかった。盛親は再び城跡を見た。大坂城はもうない。豊臣も終わった。そして、おそらく――自分も、ここで終わる。だが、不思議と悔いはなかった。盛親は空を見上げた。雲がゆっくり流れている。あの日、岡豊城で見た空と、どこか似ていた。「父上」盛親は静かに言った。「四国は守れませなんだ」風が吹いた。灰が空に舞い上がる。遠くで、徳川の兵が声を上げていた。戦の終わりを告げる声である。盛親は、静かに立ち上がった。武将として生きた者は、最後まで武将である。背を伸ばし、ゆっくりと歩き出す。その背中には、敗北の影があった。だが同時に――戦国という時代の、最後の武将の姿があった。長宗我部の物語は、ここで終わる。しかし、その始まりは、遠く土佐の山の中にあった。岡豊城。霧の立ちこめる山城。そこに、一人の病弱な少年が生まれた。後に四国を統一する武将。長宗我部元親である。物語は、そこから始まる。 Read more

ASIN B0GSV443X9
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Language Japanese
File size 848 KB
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Print length 258 pages
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Publication date March 17, 2026
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